
脳という閉鎖空間
における
圧刺激
の機能を解き明かす
プレッシオ脳神経科学の創生
本領域の名称にあるプレッシオはラテン語で“圧縮”を意味します。脳を含む私たちの体内の組織や細胞は様々な機械的な力に曝されています。近年、メカノバイオロジーと呼ばれる研究分野において、細胞には機械的な刺激を検出する「メカノセンサー」として機能するタンパク質が多数存在することが明らかにされてきました。これらのメカノセンサータンパク質が機能する細胞内の部位や検出する機械的シグナルの種類としては、細胞間の接着や細胞骨格に加わる引張力、細胞外基質との接着の強度や組織の硬さ、細胞膜や核膜の変形などが挙げられます。このような多様なメカノセンサー分子の存在から、私たちは次のような可能性を考えました。すなわち生体組織では機械的な要素の変動に対するメカノセンシング(メカノセンサー分子を介して機械的な刺激を細胞が検出すること)とメカノレスポンス(メカノセンシングの下流で引き起こされる細胞応答)が、これまでの人類の想定よりも多様に起こっており、これらは生体組織の正常発生・機能・病態に深く組み込まれているという可能性です。本研究領域では生体の高次機能発現において重要な臓器である脳に着目し、硬い頭蓋骨に閉じ込められた脳にとって宿命的な機械刺激である圧刺激(脳圧)について、メカノセンシング(圧刺激の検知の機構)とメカノレスポンス(その下流で引き起こされる細胞・組織応答)に焦点を当て脳組織の正常発生・機能・病態への寄与の解明を目指します。この目標に向けて、脳組織に対して圧刺激を操作する実験系および測定方法の開発・改良に加え、分子生物学的実験操作とイメージング技術を組み合わせた解析を進めています。これらの実現には物理的、工学的、生物学的という多岐にわたる解析技術・知識・発想が不可欠であり、本研究領域ではこれらに長けたメンバーの研究技能を集結することで精力的な共同研究を行っています。
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